県警監察官室による射撃実験(乙27号)

■1.射撃実験報告書本文
■2.添付写真
■3.乙27号証の問題点


報道番組「ザ・スクープ」による乙27号ペテン射撃実験の検証
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1.射撃実験報告書本文



2.添付写真
 

添付写真
添付写真の説明
試射に使用したけん銃
発射直前の状況
発射直後に銃身を握った右手掌部の状況(火傷痕等なし)
発射箱内の状況
試射箱から銃口までの距離(約30センチ)
試射後における試射箱の2枚目の布の状況
試射後における試射箱の3枚目の布の状況


3.乙27号証の問題点

3.1 射撃実験のウソ

被告神奈川県警によって行われた乙27号証射撃実験は、物理的にありえない結果を導き出すために行われた、前代未聞のペテン実験である。自殺・他殺を分ける重要部分について行われた偽証行為であり、戸部事件の本質を語るものである。

県警は、柳氏の死因について、銃口を左胸に当てての「自殺」と発表している。なのに、敢えて試験布との距離30cmを取り、接射による実験をしなかった。

    上2枚は監察官室による射撃実験。
    左は「写真撮影報告書」44番にある、柳氏死亡の際の発砲姿勢。

    この、たった1枚の布に開いた穴、いったい何を示したいのか。火薬残渣の散布状況を調べるGSR検査(別途説明)をせず、30cmの距離をとって射撃した場合の穴の口径だけを示しても、事件との関係を伺い知ることはできない。 しかも、この時使用した弾丸は事件で使われたホローポイント弾ではなく、先端が装甲されたフルメタル・ジャケット弾であった。弾の種類が異なれば、当然に穴の口径が異なってくる。

    柳容疑者が「自殺」をした際、左手で順手に銃身を握り、右手親指で引き金を押すようにして発砲したことになっている。ならば、銃身を握った状態で発砲し、火傷・ススの付着状態を調べねばならない。銃身5cmのリボルバーの場合、布を巻いて実験をすれば、通常は焼け焦げに加え、真っ黒にススが付着するはずである。 この実験のように、発砲してしばらくしてから握ることには、何の意味もない。そればかりか、銃身を握っての自殺でも手のひらに異常はないといわんがばかりであり、故意に事実関係をゆがめる反証を提示しようとした疑いもあり、極めて悪質な行為と断定せざるを得ない。


 

3.2 拳銃自殺者の手と弾丸種

その(1)シリンダ・ギャップ
リボルバー式拳銃は、銃身と回転弾倉の間に隙間がある。ここからGSR(火薬残渣)が飛び出す。左は事件で使用された銃と同種のロッシ・リボルバーであるが、同社のリボルバー銃「取扱いマニュアル」には、次のように書かれている。
【引用文】
■18項 拳銃の銃身に、絶対に手を触れてはいけません。
■24項 リボルバー銃は、シリンダと銃身の間の空隙から、高熱のガスが高速で吹き出す“側面発砲”または“シリンダ発砲”を起こします。射撃する際には、他の人は後ろか遠くに下がらせ、貴方の手や体がリボルバー銃の両横に触れないよう、心がけてください。
(「ロッシ社のWebサイト」より和訳 )
出典 http://www.rossiusa.com/revmanual1.html#anchor33710

その(2)拳銃発射の瞬間
リボルバー式拳銃の発射の瞬間。銃身と回転弾倉の間から炎とススが出ていることに注意。この発射ガスの温度は、銃口部分で摂氏1500度以上である。 事件で使用された拳銃は、銃身が2インチ、回転弾倉が2インチ、合計で10センチぐらいである。 つまり、取調官の供述にもとづく戸部署の事件再現のとおりであれば、柳容疑者は発射ガス全体を左手のひらで包んでいる。 その結果は、下記写真のようにならなければならない。 ところが、柳容疑者の左手のひらには、なんら火傷・ススの痕跡がなかったことが、救急病院の担当医師と葬儀社社長の証言により確認されている。

拳銃自殺した人の左手のひら
出典: Forensic Tutorial「法医学講義」 出典:"Gunshot Wounds"

出典:"Gunshot Wounds"

その(3)弾丸の種類
弾丸は、弾底に撃鉄が当たり点火薬に発火、その熱が発射薬に伝わって薬きょうのなかに爆発が起き、その高圧ガスの力で弾芯が飛び出すことで発射が完了する。弾芯を包むものがジャケットであり、不燃部分である弾芯とジャケットの形状によって弾丸の種類が異なり、目標へのインパクトが異なってくる。
フルメタル・ジャケット弾
FML : Full Metal Jacket
ホロー・ポイント弾
JHP:Jacketed Hollow Point
ホロー・ポイント弾(弾芯が露出しているもの)
LHP : Lead Hollow Point
科捜研のテストでは、先端が潰れたものよりも貫入力の強いフルメタル・ジャケット弾が使われた。実際に事件で使用されたものはホローポイント弾である。異なる弾丸で試験をして、県警は何の推論を導きだそうというのだろうか。
フルメタル・ジャケット弾 ホロー・ポイント弾

 

3.3 乙27号証ペテン射撃実験の考察ポイント−まとめ

乙27号証は、(A)接射にしては衣服の射入口が小さいこと、(B)柳吉夫の左手のひらには火傷・ススのあとなかったという原告の主張に対し、県警の側で実際に射撃をしてみることにより、射入口の状況、火傷・ススの可能性を立証するため行われた実験であるという。

米国における銃器犯罪鑑定人の資料によれば、「接射」「準接射」「近射」「遠射」の区別が犯罪の実際の状況を割り出すうえで重要な要素であるとされる。目撃証言はしばしば食い違い、密室での犯行や仲間うちの発言にはウソが混在しやすいともされる。そこで、数枚の試供体の布に異なる距離からの射撃を行い、実際の証拠物件に付着しているスス、鉛、亜硝酸塩などの散布状況と比べ、おおよその距離を割り出すことに実験の主眼が置かれている。 これをDistance Determination(発砲距離の測定テスト)という。

それに対し、県警・監察官室の射撃テストは、一枚だけの試供体に、「供述調書」にある「接射」の条件ではなく30cmを離し、事件で使用されたホローポイント弾とは異なる種類のフルメタルジャケット弾を使って行われている。

しかも、射撃ののちに銃身を掴んだ手のひらの写真を報告書に掲載し、わざわざ「火傷痕等なし」と注釈をつけているが、銃弾の発射の瞬間をとらえた写真を見れば、実際にはどのような状況となるかは明白である。

この県警の射撃テストが、真相追及のために行われたものなのか、それとも、あくまで自殺説を貫くため、原告の主張への「反証」が目的で、故意に条件設定を事件の実際とは異なるものとして行われたものなのかは、想像するに難くないであろう。

このような恣意的なテストが行われ、警察の主張として裁判所に提出されることに、誰しもが呆然とせざるをえないだろう。 すなわち、市民社会において、銃器の携帯を許されているのは警官のみであるが、警官が故意か誤って人を撃ち殺しても、警察組織は恣意的な反証データの作成により、その警官の立場を不当に守ろうとすることを、この射撃テストは如実に物語っているからである。